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2011年 05月 09日
※2009年、東京・ポレポレ東中野での公開時にお寄せいただいたリレーブログを再掲載します。
中植きさら(Space&cafeポレポレ坐/『祝の島』製作デスク) 「へばの」はだんだん、におってきていた。 秋の終わりごろだったか、ポレポレ東中野の階段を下りていったら 工事現場の警備員の格好をした人がいた。 「へばのの木村です」といって握手の手を差し出したその人は なんだかふにゃふにゃしているし、 風貌からも映画監督とはとても思えないし、 ヘンな人やなー と思った。 それからずいぶん時間が経って、寒い終電近くの帰り道、 ポレポレの壁面に「へばの」という文字がかかっていた。 あーそろそろやるんだな。 白地の看板はめずらしいけど、 けっこう目立っているな。いいな。 と思った。 そしてへばのオープニングイベント。 イベントが終わって後日会場費の会計をした時、 プロデューサーの桑原さんに領収証の宛名を聞いたら、 「桑原」という個人名だった。 カフェで打ち合わせしている風な時の会計も、 お茶代ひとりづつ精算したりするというし、 「うーーーん、内部の会計はどうなっているのだ!?」 とおせっかいなことを思った。 それから毎夜毎夜、チーム「へばの」は 映画館にやってくる。 外のベンチやら、映画館の灰皿のまわりに、 ちらほらと、いる。 所在なさそうな感じで。 そんで上映が終わった11時頃には 度々近所の居酒屋で遭遇する。 なんだか分からないけど気がかりな集団だった。 この人たちが作った映画はいったいどんなんだ。 と思った。 山口県祝島(いわいしま)という、 原子力発電所予定地を間近に抱え 暮らす人たちの記録映画に関わって、 島に何度か通っている者としても 気にかかった。 そんな訳で久々にレイトショーの席に着いた。 そして見た「へばの」は、 痛く、重いものだった。 でも、不思議に、うれしかった。 原発や放射能、 その他にも社会の中で 『問題として扱われるべき問題』のようなものを 扱った映画を見た時の もやもやした感じ。 映画を見ることで その問題についての知識が増えても いつも、 なんでだ、なんなんだ、 と、思いつつ、言葉にできないでもやもやしていた、 なんっか違うんだよな。しっくりこないんだよな。 と思っていたあの感じ。 「へばの」はそれを 拭き取ってくれたのだ。 なんかぼろぼろのタオルで、 拭き取ってくれたような感じなのだ。 ある意味、ありえんだろ、 というようなところのある そのストーリーは、 登場人物のひとりひとりの、 ひとつひとつの行動に、 「意味」がにじみ出ていた。 ありえなくてもいい。 大事なのは行動で示される その「意味」だった。 どうしようもない現実の中に人は生きていて どうしようもない現実にのみこまれながらも どこかに希望をつなげてゆく。 それが生きていくということなんだ。 それがあまりにも生々しくて いつもは見ないようにしているけど そういうことだ。 それを「へばの」に見せつけられた。 「へばの」をつくった人たちの、 『自分たちはこうだ』 というところが、 ものすごく正直に、 『こうだ』 というところが、突き詰められて、煮詰められて、 このどろっとした 「へばの」という形になったのだろう。 そのことが、 画面からあふれた。 その姿勢が、 なによりまぶしかった。 この映画をつくったのが、 この題材を扱ったのが、 せまい、物がごちゃごちゃした散らかったアパートで じりじりと何かをおなかに抱えているような人がつくった(だろう) ということが、 すごい、と思った。 うれしかった。 というのはそこだ。 太陽をいっぱいに浴びて すくすく育ったような人は、 (そんな人は居るか分からないけど) 同じ題材を扱っても、 こんな映画は作らないだろう。 そしてその映画には 私はここまで動かされないかもしれない。 この映画を、 私のような“もやもや”を持った人に (そういう人は、たくさんいるだろう) 見てもらいたいと思う。 是非とも。 どきっとするだろう。 なにか感じるだろう。 感じたなにかを、 その人の中に持ち続けるだろう。 それは、何かを変えるかもしれない。 変えないかもしれない。 それはどちらでもいい。 ただ、見て欲しい、と、 ほんとうにそう願っている。 そして最後に、 私はいま、 チーム「へばの」に嫉妬している。 なんだか分からないけれど 負けてはいられない、 と、思っている。 「へばの」を見て生まれたその気持ちは、 おのずと、 いま関わっている映画に向いてゆくだろう。 どうなるかわからないけど。 ありがとう。 「へばの」。 ************************************ 『へばの』英語字幕版上映+USTREAM 同時配信 2011年5月15日(日)モーニング&レイトショー上映 ◎モーニングショー 【開場】 10時30分 【開映】 11時00分〜 【座談会】 12時45分〜 【会場】 光塾 COMMON CONTACT 並木町(東京都渋谷区渋谷3-27-15 光和ビルB1) ※上映終了後に休憩をはさみ、その場で、参加を希望される方々と、監督・スタッフにより座談会を一時間程度行いたいと思います。参加は無料です。 ◎レイトショー 【開場】 20時50分 【開映】 21時10分〜 【会場】 オーディトリウム渋谷(東京都渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 2F) 【各回入場料】 予約:1,000円 / 当日:1,200円 【ご予約・お問い合わせ】 E-mail:teamjudas@ss.lomo.jp ※各回共、映画上映と同時にUSTREAM 配信を行います。 www.ustream.tv/channel/hebano-goodbye ※経費を差し引いた収益の全額を被災地の義援金として寄付、もしくは物資を購入して届ける予定です。 送付先、届け先に関しましては現在検討中、終了後に会計収支とともにをHP上で報告します。
by hebano_goodbye
| 2011-05-09 11:58
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