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2011年 05月 13日
※2009年、東京・ポレポレ東中野での公開時にお寄せいただいたリレーブログを再掲載します。
畑下有紀江(映写/ポレポレ東中野) 手のひらに残る冷たい頬の懐かしさ どんなにかき回されて、ゆれて、めぐっても 行き着くところは、あたしの芯に、はじめから宿っていて 自分ですらそれを破れない 鉛の空を蓑にして、かりそめにひきかえしても なにもかもとかしてしまう白さの前では、気づいてしまう そのときが来れば、シャッターが閉じ、銃を突きつけられても ほかに安らげる場所なんて知らないあたしは この土の上でいちばんきれいなまま眠りにつこう 石川翔平(ポレポレ東中野) 映画は荒涼とした雪原のロングショットから始まる。 ゴーッという吹雪の音が鳴る。 長いショット。 やがてゆっくり画面の真ん中に白い線が見えてくる。 その線は女の裸体の腰骨のあたりだと判る。 吹雪の音がフェイドアウトし、横たわった女の裸体が映し出される。 2007年7月に当劇場にて公開された『ラザロ』のスタッフ・木村文洋の作品が完成して、 2008年9月頃、当劇場での公開を考えていると聞いた時、 公開して成功するか漠然と不安だった。 木村文洋の新作『へばの』は、お客さんが観に来る要因がとても少ないように思えたのだ。 木村文洋は全くの新人監督であり、 過去の作品がどこかで上映されていたり、 どこかの映画祭で受賞したりしたような作品ではなかったからだ。 当劇場は下北沢トリウッドと提携プロジェクトを行っており、 トリウッドで大ヒットさせた監督の次回作は、ポレポレでのロードショー公開が約束されるといったシステムで、 しかし、“へばの組”はそのプロジェクトや映画祭への出品歴などの“話題づくり”には見向きもせず、 直ちにポレポレで公開をすることに自信と熱意を持っていた。 その自信と熱意はどこから来るのか、当初私には懐疑心すらあった。 しかし、前述した映画の冒頭を見たとき、不安や懐疑心は飛んだ。 『へばの』は紛れもなく映画であり、 ポレポレで公開すべき映画だ。 『へばの』は外へ開かれたテーマやメッセージを持っており、 描写や映画語法にも確固たるものがあった。 映画を観終わった後、制作者の衝動に共感してしまうような、不思議な可能性があった。 すぐに“へばの組”は動き出す。 宣伝協力の加瀬修一による明快な分析などによって、 「自主映画の一レイトショー」の枠に捉われない、 拡がりを含んだ方向性も見えてきた。 チラシのビジュアルが決まったとき、 その茫洋とした油絵から『へばの』の制作者たちの鬱屈とした想いが溢れ出すように見えた。 表現の最前線にいる女性クリエーターからのコメント、 木村文洋が今まで培ってきた映画人たちからの愛に溢れたコメント、 カイロ国際映画祭での受賞などを経て、 『へばの』の強度は増してきていた。 迎えた2009年1月31日。 夕方より当ビル1階スペース&カフェポレポレ坐での公開記念ライヴ&トーク。 北村早樹子による主題歌「蜜のあはれ」の演奏は、 映画が好きで、映画がつくりたくて、出来た映画を劇場公開させたくて、劇場公開を成功させて、死ぬまで映画を作り続けたい一人の若者の始まりを告げるチャイムだった。 年末頃から恒例となっていた街頭チラシ配り&予告編映写をこの日も東中野駅前で行い、 とうとう初回の上映を迎えた。 客席は超満員。 上映後には拍手が起きた。 その後も客足は極端に落ちることはなく、 多様なゲストとの毎日のトークセッションによって、映画監督・木村文洋は生まれつつある。 初めてギターを持った中高生が、自分の好きなバンドの曲をコピーするように、 映画を作っていきたい若者には『へばの』を映画館で見てほしい。 映画を完成させて劇場公開するとはこういうことなのだ。 映画を作るのと同じくらいのお金と労力と覚悟が必要だけど、 自分たちだけでも出来る。 ************************************ 『へばの』英語字幕版上映+USTREAM 同時配信 2011年5月15日(日)モーニング&レイトショー上映 ◎モーニングショー 【開場】 10時30分 【開映】 11時00分〜 【座談会】 12時45分〜 【会場】 光塾 COMMON CONTACT 並木町(東京都渋谷区渋谷3-27-15 光和ビルB1) ※上映終了後に休憩をはさみ、その場で、参加を希望される方々と、監督・スタッフにより座談会を一時間程度行いたいと思います。参加は無料です。 ◎レイトショー 【開場】 20時50分 【開映】 21時10分〜 【会場】 オーディトリウム渋谷(東京都渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 2F) 【各回入場料】 予約:1,000円 / 当日:1,200円 【ご予約・お問い合わせ】 E-mail:teamjudas@ss.lomo.jp ※各回共、映画上映と同時にUSTREAM 配信を行います。 www.ustream.tv/channel/hebano-goodbye ※経費を差し引いた収益の全額を被災地の義援金として寄付、もしくは物資を購入して届ける予定です。 送付先、届け先に関しましては現在検討中、終了後に会計収支とともにをHP上で報告します。
by hebano_goodbye
| 2011-05-13 17:05
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